2020/03/18
似て非なるもの
From 伊澤真由美
池袋のオフィスより
自分はこのジャンルだったら詳しいよ、と自信を持って言えるもの、何か思いつきますか?
車に詳しい人でしたら、街中で見かけた車の種類は当然のようにわかるでしょうし(生憎、自分は疎くてよくわかりません)
動物好きな方なら、散歩している犬を見つけて、すぐに種類が言えたりするでしょう。
魚屋さんでなくても、釣りが趣味の人は魚の種類を見分けられるでしょうし、花や木に興味がある人からしたら私のように菖蒲(あやめ)と菖蒲(しょうぶ)と杜若の区別がつかないなんて信じられないかもしれません。
美容師さんなら、美容材料の違いやハサミの良し悪しなんて、当たり前のようにわかるのではないかと想像します。
わかるひとにはわかって当然。
ただ、素人目にはわからないとか、興味がないと差がよく見えないということもいろいろあると思います。
ちょうど確定申告のシーズンなので、毎日のように所得税の申告書とにらめっこしているとふと目に入るのですが、たとえば「給料」と「退職金」。
この違いってなんでしょうか?
どちらもお勤め先で働くことによってもらえることは変わりありません。
給料はたいてい毎月もらえて、退職金はたいてい1度きりしかもらえない、というのは違う点です。
実はこの違いを考慮して、税金面での取り扱いには大きな違いがあります。
どちらも個人が受け取るものなので、所得税という税金がかかります。
ただし「給料」は「給与所得」、「退職金」は「退職所得」と、まったく別々のカテゴリーで税金を計算します。
たとえば給料で1年に1,000万円を受け取るとします。
給料は「給与所得控除」という経費のようなものを差し引けるので、これを引いたあとの所得(もうけ)は780万円になります。
仮に社会保険の支払や生命保険の支払など控除できるものが何もない、ほかの所得もないとすると、この場合の所得税は1,070,600円です。
ではこれが退職金だったらどうなるか。
退職金も、もうけの計算で差し引けるものがあって、これを「退職所得控除」と言います。
これは勤続年数が長くなれば長くなるほど金額が大きくなります。
勤続年数が20年以下の場合だと、退職所得控除額は
40万円×勤続年数
で計算します。
仮に勤続年数が10年だとすると
40万円×10=400万円
退職所得は
(収入金額-退職所得控除額)×1/2
で計算しますので
(1,000万円-400万円)×1/2=300万円
と、ぐぐっと少なくなります。
そしてこれに対する所得税の金額は202,500円です。
ちなみに所得税の計算の中では、所得(もうけ)を10種類のカテゴリーに分類しています。
毎月受け取るような「給与所得」や、継続してもうけが出るような「事業所得」、「不動産所得」などは「総合課税」というグループにまとめられて税金を計算します。
給与以外に収入があれば、どんどん合算されていくので、税金も高くなっていきます。
一方、一生に一度しかもらえないであろう退職金は「分離課税」と言って税金計算のときにも、給与や事業の所得とはわけて、単独で計算します。
一般的に長年勤務した職場を退職した後はそれまでの貯金や退職金で暮らしていくので、老後の資金から給与などと同じように税金を払ってしまうと生活に困るだろう、という配慮がなされているんですね。
勤めたことによってもらえる収入でも、給与と退職金では税金面での取り扱いが変わるので、もし、退職金の支払をするようなことがあったら、注意が必要です。
PS 税務や給与の計算について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
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